最高裁が投票権法の重要条項を制限、南部選挙区の再編に影響
米国最高裁判所は6月、投票権法(Voting Rights Act)の重要な条項を制限する判決を下し、公民権団体に敗北を与えた。この決定は、南部全域の選挙区割りを再編し、2024年の選挙区マップと比較して共和党の下院議席を最大19議席増加させる可能性があると専門家は指摘する。
ルイジアナ州選挙区を巡る判断
多数意見を執筆したサミュエル・アリート判事は、ルイジアナ州が「多数マイノリティ選挙区を追加する義務はない」と指摘。同州がSB8と呼ばれる選挙区マップを策定する際に人種を考慮したことは「憲法違反の人種操作(ラacial gerrymandering)」に該当すると述べた。
投票権法第2条が持つ歴史的意義
投票権法第2条は、人種差別的な選挙区割りを禁止する条項で、特に南部における有色人種の投票権保護に貢献してきた。公民権運動の象徴的存在であった同法は、ジム・クロウ法の廃止と黒人アメリカ人の選挙権拡大に寄与した。
反対意見と憲法論争
その一方で、第14修正条項が人種を基準とした選挙区割りを制限していると主張する反対派も存在する。彼らは、第2条を用いて人種差別的選挙区を是正する行為自体が「逆差別的な選挙区操作」にあたると指摘している。
ルイジアナ州を巡る長年の法廷闘争
ルイジアナ州では2020年以降、選挙区マップを巡る激しい法廷闘争が続いてきた。黒人有権者(州人口の約30%)は2022年、自身の選挙権が十分に反映されていないとして、第2選挙区の設置を求める訴訟を起こし、勝利した。これを受けて州議会は選挙区マップを改訂したが、非黒人有権者が新たな選挙区マップは人種を過度に考慮しているとして提訴。2024年に3人の裁判官からなる合議体がこれを認め、最高裁の判決に至った。
フロリダ州知事の思惑と今後の選挙区改定
フロリダ州のロン・デサンティス知事は、最高裁の判決を受けて選挙区改定を推進する意向を示していた。同知事は、投票権法が骨抜きにされることを前提に、選挙区再編に着手する構えだった。
専門家の見解:投票権保護の「防護壁」が消滅
「投票権法はまさに防護壁でした。それがなくなれば、赤の州の多くは州憲法でも投票権保護が不十分なため、状況はさらに悪化します」
アプル・オールブライト(Black Voters Matter所属)
南部の議席配分に与える影響
今回の判決は、南部諸州の議席配分に大きな影響を与える可能性がある。特に共和党優位の選挙区が増加することで、2024年選挙区マップと比較して最大19議席の議席増加が見込まれる。これは、今後の選挙戦略や政党間の勢力図に大きな変化をもたらすと予想される。
今後の展望:州レベルでの保護強化が課題に
専門家は、連邦レベルでの投票権保護が弱体化する中、州レベルでの法整備や憲法改正による保護強化が急務だと指摘する。特に南部の州では、人種差別的選挙区割りを防ぐための新たな枠組みが必要とされている。