運動の「強度」が健康リスクの低減に大きな影響を与えることが、新たな研究で示された。これまでのガイドラインでは運動の「量」(総時間)が重視されてきたが、実際には「質」(強度)がより重要である可能性が高いという。
運動強度が疾患リスクを左右する
中国中南大学の研究チームが欧州心臓学会誌に発表した研究によると、日常生活に数分間の激しい運動を取り入れるだけで、主要な8つの疾患リスクが大幅に低下することが明らかになった。具体的には、全死亡リスク、心血管疾患、2型糖尿病、認知症などのリスクが低減するという。
研究の共同著者である沈敏学教授(公衆衛生学)は、Healthlineに対し「総運動量のわずか4%程度(1日数分)の激しい運動でも、明確な健康効果が得られる」と述べた。ここでいう「激しい運動」とは、息が上がり、数語しか話せないほどの強度を指す。例えば重い買い物袋を運ぶ、階段を急いで上るなどの日常動作でも該当する。
運動強度が特に効果的な疾患
研究結果によると、運動強度は疾患によって効果が異なる。2型糖尿病のリスク低減には、運動強度が特に重要であり、激しい運動を行う人はリスクが60%も低下することが判明した。また、免疫関連疾患については、運動強度がリスク低減のほとんどを占めるという。
一方で、運動量(総時間)も重要な要素であるが、その効果は疾患によって異なる。例えば心血管疾患では、運動量と強度の両方がリスク低減に寄与する一方で、認知症リスクの低減には強度がより重要な役割を果たす。
研究データの概要
研究チームは英国バイオバンクのデータを活用。対象はイギリス在住の成人約50万人で、そのうち9万6千人にはリストバンド型のフィットネストラッカーを7日間装着してもらい、客観的な運動データを収集した。また、37万5千人については自己申告による運動データを分析した。
対象者の平均年齢は56~62歳で、女性が半数以上を占めた。研究者らは各参加者の総運動量と、そのうち「激しい運動」に該当する割合を算出した。ここでの「激しい運動」は、ランニングなどの高強度な動作と定義された。
ガイドライン見直しの可能性
現在の運動ガイドラインでは、成人に対し週150分の中強度運動(または75分の高強度運動)が推奨されている。しかし、この研究結果は、短時間の高強度運動でも同等以上の健康効果が得られる可能性を示唆している。研究者らは「運動の強度に関する具体的なガイドラインの見直しが必要」と指摘している。
「運動の強度は、単に運動量を増やすよりも、はるかに効果的な健康増進策となり得る」
— 沈敏学教授(中南大学公衆衛生学部)
今後、より多くの研究でこれらの知見が裏付けられれば、運動習慣のあり方が大きく変わる可能性がある。