米国の高等教育機関が深刻な危機に直面している。2026年の秋学期を最後に閉校することを発表したマサチューセッツ州のリベラルアーツカレッジ、ハンプシャー大学は、その象徴的存在だ。
同大学は1965年に設立され、「リベラルアーツ教育の再構築」を掲げてきたが、近年は財政難と学生数の減少に苦しんでいた。同大学の卒業生には、ドキュメンタリー監督のケン・バーンズ氏や俳優のルピタ・ニョンゴ、リーヴ・シュレイバー氏らが名を連ねる。しかし、ハンプシャー大学は氷山の一角に過ぎない。
米国には約4,000の大学が存在するが、新型コロナウイルス感染症の流行以降、約100校が閉鎖された。さらに今後10年間で、多くの大学が存続の危機に直面すると専門家は指摘する。大規模な州立大学やハーバードやイェールなどの資金力のある私立大学は比較的安定しているものの、地方の小規模校は特に厳しい状況に置かれている。
このような状況が続けば、学生の選択肢が減少するだけでなく、高等教育そのものへのアクセスが困難になる可能性がある。
ハンプシャー大学の閉校に至る経緯
ハンプシャー大学の閉校が発表された直後、同大学の現状について専門家が解説した。同大学は表面化していた問題以上に深刻な状況にあったという。
同大学は6年以上前から財政難に陥っていたが、芸術分野で成功を収めた卒業生らによる支援により、かろうじて存続していた。しかし、その支援だけでは限界があった。同大学の基金は非常に小さく、学生数は800人を下回り、2,100万ドルの負債を抱えていた。
同大学の負債は、学生ローンの負債とは異なる「機関負債」と呼ばれるものだ。多くの大学が借入金を増やしており、その返済が運営予算を圧迫している。また、学生獲得のために実施される授業料の割引も問題を深刻化させている。
米国の大学では、授業料の実質的な割引率が50%を超えるケースが珍しくない。これは、実質的に収入の半分を返還しているのと同義であり、民間企業であれば即倒産に追い込まれる状況だ。
地方の小規模校に迫る存亡の危機
ハンプシャー大学のような小規模校は、新型コロナウイルス感染症の流行を機に、その脆弱性が一層明らかになった。学生数の減少、財政基盤の弱さ、そして競争の激化が、多くの大学にとって大きな課題となっている。
特に地方の小規模校は、大規模な大学と比較して、基金の規模が小さく、学生獲得競争に勝ち抜くことが難しい。その結果、多くの大学が閉鎖に追い込まれている。
専門家によると、今後10年間でさらに多くの大学が閉鎖される可能性があるという。このような状況が続けば、学生は高等教育を受ける機会を失うだけでなく、地域経済にも悪影響を及ぼす可能性がある。
高等教育の未来に向けた課題
米国の高等教育機関が直面する課題は多岐にわたる。財政難、学生数の減少、そして競争の激化は、その一端に過ぎない。しかし、これらの課題を克服するための取り組みも進められている。
例えば、一部の大学ではオンライン教育の充実や、産学連携の強化など、新たなモデルの構築に取り組んでいる。また、政府や民間団体による支援も検討されている。
しかし、これらの取り組みが功を奏するかどうかは、今後の動向を見守る必要がある。いずれにせよ、米国の高等教育機関が直面する課題は、単なる一時的なものではなく、構造的な変化を迫られる可能性が高い。
「大学が倒産するという事態は、もはや例外ではなく、当たり前の出来事になりつつある」
—— ジョン・マーカス(ヘッチャー・レポート上級高等教育記者)