米国の住宅市場は、パンデミック後の住宅ブームが終焉し、2022年夏に金利が急上昇して以降、買い手優位の状態が続いている。この変化を示す重要な指標の一つが、在庫/販売可能月数だ。この数値の動きを分析することで、各地域の住宅市場における需給バランスの変化を把握できる。
在庫が急増し、物件の売れ残り期間が長期化する場合は、価格の下落や市場の弱さを示唆する。逆に在庫が急減し、販売期間が短縮される場合は、市場の活況化や競争の激化を示す。2022年以降、全米的な需給バランスは買い手に有利な方向へとシフトしており、在庫は前年比で8.1%増加している。その一方で、在庫水準はパンデミック前の2019年と比較してわずか13.6%減にとどまっている。
この変化の主な要因は、新規物件の供給増加ではなく、売り手が販売に苦戦していることだ。その結果、物件は市場に長くとどまり、在庫としてカウントされる期間が延びている。Zillow.comのデータによると、米国の物件が売り出しから成約までにかかる平均日数は、以下のように推移している。
- 2019年春:41日
- 2020年春:36日
- 2021年春:14日
- 2022年春:10日
- 2023年春:26日
- 2024年春:25日
- 2025年春:33日
- 2026年春:39日
在庫とは、当該月に販売中の物件(成約前のもの)の総数を指す。物件の売れ残りが増え、翌月に繰り越されることで在庫が積み上がる。現在、多くの住宅市場でこの現象が見られ、全米の中央値である販売までの日数と在庫水準が、いずれもパンデミック前の2019年とほぼ同水準に戻りつつある。これは、両者が密接に関連していることを示している。
ただし、この状況は地域によって大きく異なる。南西部や南東部の市場では、他地域と比較して販売までの日数が大幅に長期化している。2026年2月における、全米250の大都市圏のうち販売までの日数が最も長い上位15市場は以下の通りだ。
販売までの日数が長い上位15市場(2026年2月)
- アシュビル(ノースカロライナ州):105日
- マカレン(テキサス州):86日
- ラレド(テキサス州):83日
- ホウマ(ルイジアナ州):83日
- オースティン(テキサス州):82日
- ダフネ(アラバマ州):81日
- ロングビュー(テキサス州):78日
- レイクチャールズ(ルイジアナ州):78日
- クレストビュー(フロリダ州):77日
- パナマシティ(フロリダ州):77日
- サンアントニオ(テキサス州):74日
- マートルビーチ(サウスカロライナ州):72日
- キリーン(テキサス州):71日
- オカラ(フロリダ州):71日
- ネープルズ(フロリダ州):69日
一方で、販売までの日数が短い上位15市場は以下の通りだ。
販売までの日数が短い上位15市場(2026年2月)
(データが不完全なため、一部のみ掲載)
- ランカスター(ペンシルベニア州):9日
- ハートフォード(コネチカット州):10日
このように、米国の住宅市場は地域によって明確な二極化が進んでおり、在庫と販売期間の関係からその実態が浮き彫りになっている。