米連邦第1巡回区控訴裁判所は1日、ニューハンプシャー州に対して連邦大気浄化法(Clean Air Act)への compliance(遵守)を目的とした自動車排ガス検査プログラムの維持を命じた地裁命令を、控訴審中に一時的に差し止める決定を下した。

同控訴裁判所の unsigned order( unsigned opinion、判事名不記載の決定文)では、同州が実質的に勝利する見込みが高いと結論付けられた。ただし、反命令原則(anti-commandeering doctrine)に基づく州の主張は採用されなかった。同原則は連邦政府が州に対し特定の政策実施を強制することを禁じる憲法原則だが、州側は十分な主張を行っていなかった。

控訴裁判所はむしろ、原告のゴードン・ダービー社(Gordon-Darby)が提起した「ニューハンプシャー州がClean Air Actに違反している」との主張が時期尚早であったと判断した。同社は同法の「市民訴訟条項」(citizen suit provision)に基づき提訴したが、州議会が排ガス検査プログラムの廃止法案を可決した時点では、同プログラムの廃止はまだ発効していなかったためだ。市民訴訟は「過去または現在の違反」に対するものに限定されるが、地裁は「完全に将来的な違反」に対しても差し止め命令を出した形となった。

控訴裁判所はさらに、同州に廃止されたプログラムの強制執行を命じる差し止め命令は回復不能な損害をもたらすと指摘した。同州議会は同プログラムを廃止する法律を可決済みであり、同命令により「州議会が廃止したプログラムの執行を強制される」ことになるためだ。また、ゴードン・ダービー社にとっても、同命令により同社が排ガス検査契約を獲得できる保証はないとされた。

同控訴裁判所が州側の反命令原則や連邦主義に関する主張に言及しなかった点について、同社の主張が法的根拠に乏しい「濫用的な訴訟戦術」であったことが背景にある。同社は州が合法的に廃止した契約の維持を目的に提訴しており、その目的は明らかだった。

同控訴裁判所の決定を受け、地裁は1日にゴードン・ダービー社の「州当局者を侮辱罪で処罰し制裁を科す」という極めて大胆な請求を却下した。同地裁判事は、連邦政府に州法の制定や執行を強制する権限がないことを認識していたとみられる。

技術的にはニューハンプシャー州の控訴審は継続中だが、同訴訟の行方はもはや疑いの余地がないと専門家らは指摘している。

出典: Reason