FISA第702条とは?海外監視の国内への波及問題

2008年に制定されたFISA第702条は、国家安全保障上の脅威とされる「米国外の人物」を対象とした通信傍受を認める法律だ。当初は行政府の権限で実施されていたが、通信傍受は必然的に米国民のデータも巻き込む。国家情報長官室によれば、同条は「米国外の人物を標的とした監視」を目的としているが、実際には米国民の通信も大量に収集される。

米国政府のプライバシー・市民的自由監督委員会(PCLOB)は2023年の報告書で、第702条が「米国民のクエリや一括検索といった手法により、プライバシーと市民的自由に重大なリスクをもたらす」と指摘。さらに、監視対象の「上流」に位置する米国民のデータも収集される可能性が高いと警告した。

トランプ大統領の立場転換と議会の混乱

2020年の大統領選挙時、トランプ氏はFISAの悪用を非難し、「FISAを廃止せよ。違法に利用された」と発言していた。しかし、大統領に就任すると立場を一転。今月、第702条の「無修正での再承認」を求め、軍事上の重要性を強調した。

議員間でも意見は分かれている。民主党の進歩派議員ロ・カーニャ(カリフォルニア州)は憲法愛好者であればFISA延長に反対すべきだと主張。共和党のリバタリアン議員トーマス・マッシー(ケンタッキー州)も「米国民への令状要求なしにFISAを再承認するな」と訴えている。

再承認のたびに揺れる第702条、市民的自由団体が改革求める

第702条はこれまで再承認を繰り返してきたが、そのたびに市民的自由派議員が改革や廃止を要求。議会はしばしば辛うじて延長に合意する状況が続いている。トランプ氏自身も第702条の危険性を認めつつ、「国家のためにリスクを冒す」と述べる一方で、多くの米国民は同法の悪用リスクを懸念している。

米国民のプライバシー保護を巡る議論

第702条の再承認をめぐる議論は、党派を超えた問題となっている。バイデン前大統領も現職時代に同条の支持を表明していたが、議員レベルでは憲法擁護派と監視推進派の対立が続いている。4月30日までの期限付き延長は、米国民のプライバシー保護を巡る議論にさらなる時間を与えることとなった。

「第702条は米国民のプライバシーと市民的自由に重大なリスクをもたらす。特に、米国民のデータが無差別に収集される可能性がある」
— 米国政府・プライバシー・市民的自由監督委員会(2023年報告書)

出典: Reason