FBI長官のカッシュ・パテル氏は8月12日、大西洋誌(The Atlantic)を相手取り、同誌が先週掲載した自身の飲酒習慣に関する記事について、名誉毀損で2億5000万ドルの損害賠償を求める訴訟をニューヨーク連邦地裁に提起した。
パテル氏の訴状によると、大西洋誌は「虚偽の主張と明らかにでっち上げられた内容で、パテル氏の評判を破壊し、職を追われるよう仕向ける目的で」記事を掲載したと主張。記事は、複数の現職・元政府高官の証言として、パテル氏の就任初期に「飲酒による夜更かしが原因で、会議やブリーフィングが午後にずれ込むことがあった」と伝えた。また、司法省とホワイトハウス関係者によると、過去1年間で「複数回、警護担当者が酩酊状態のパテル氏を起こすのに苦労した」とも報じた。
パテル氏の訴状は、大西洋誌が「記事掲載の数時間前に、主要な主張が事実無根であると警告を受けていたにもかかわらず、掲載に踏み切った」と指摘。さらに「公に入手可能な情報で主張が矛盾していたにもかかわらず、独自の情報源にも致命的な欠陥があった」と非難した。また、記者のサラ・フィッツパトリック氏が「党派的な動機を持ち、事実を知り得ない立場の匿名情報源に依存していた」とも主張している。
訴状はこの他、大西洋誌が過去2年間にわたりパテル氏を「資質不足」「危険」「腐敗」「精神的に不安定」などと繰り返し非難する記事を掲載してきたとして、その「パターン化した行為」を問題視した。
公務員の名誉毀損立証は困難だが、パテル氏には過去の勝訴実績も
公務員に対する名誉毀損の立証はハードルが高いとされるが、パテル氏には過去の訴訟で勝訴した実績がある。2023年には、サブスタックのライターであるジム・スチュワートソン氏を名誉毀損で提訴。スチュワートソン氏が「パテル氏を反逆罪に問う」「1月6日の暴動計画に関与した」「政府転覆を企てた」「議会に嘘をつくよう支払った」「ロシアの工作員」などと主張したことが名誉毀損にあたると主張した。また、パテル氏の非営利団体「カッシュ財団」の評判も傷つけたと訴えた。
2025年には、連邦判事がスチュワートソン氏に対し、「主張は名誉毀損に該当し、推定される損害が生じた」と認め、パテル氏と財団に対し25万ドルの損害賠償を命じる判決を下した。ただし判事は、パテル氏の評判が「著しく傷つけられた」とは認めなかった。スチュワートソン氏はCNBCに対し、「訴状は一度も送達されなかった」と述べ、自身も「長年にわたる悪意ある攻撃と法廷戦術の濫用に対する反訴を検討している」と語った。
大西洋誌は「 meritless(根拠なき訴え)」と反論
大西洋誌は声明を発表し、パテル氏の訴えを「根拠なきもの」と否定。「ジャーナリストを法廷で守るため、全力で戦う」と表明した。パテル氏はトランプ政権のメンバーとして、報道機関を相手取った訴訟を複数起こしてきた。トランプ前大統領もニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナル、デモイン・レジスター、CNNなど複数のメディアを提訴しており、最近ではCNNを相手取った訴訟も行っている。