2024年、米国のウクライナ支援に対する共和党内の反発が強まった。その背景には、支援金の無駄遣いや汚職、世界大戦のリスク、国内問題の優先といった主張があった。しかし、中でも最も注目を集めたのが、JDヴァンス議員(当時)が提唱し、トランプ前大統領が支持した「ウクライナは敗北必至」という論調だった。

「ウクライナの数学は合わない」と題されたニューヨーク・タイムズ紙への寄稿で、ヴァンス議員は「ウクライナは必要な兵力と装備を確保できず、敗北は避けられない」と主張した。具体的には、徴兵強化や米国からの支援を最大限活用しても、戦力不足は解消できないとの見解を示した。この主張は、2025年2月28日のオーバルオフィスでのトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との会談でも繰り返された。

トランプ大統領はゼレンスキー大統領に対し、「現在、あなたは非常に不利な立場にある。カードを握っていない」と発言。しかし、この見解はその後の戦況によって覆されることとなった。

ロシアのプロパガンダ工作

米国のシンクタンク「戦争研究所(ISW)」によると、ロシアのプーチン大統領はウクライナの敗北が不可避であるという narrativa(物語)を世界に浸透させることに成功した。しかし、その主張は戦場での実績ではなく、情報戦の勝利によるものだった。

昨年12月に行われたトランプ大統領の発言でも、ロシアが「優位に立っている」との見解が示された。しかし、現在の戦況はその見方を覆すものとなっている。今年5月に開催されたロシアの対独戦勝記念日(ビクトリー・デー)では、プーチン大統領が「戦争は終わりに近づいている」と発言したが、その真意は定かではない。しかし、いずれにせよ、ウクライナの敗北が不可避であるという当初の主張は、もはや成り立たない。

ヴァンス議員の主張の限界

ヴァンス議員が2024年にニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した際、彼は米国の高価な武器システムや旧式装備に焦点を当てた。例えば、155mm榴弾砲の砲弾を例に挙げ、そのコストパフォーマンスの悪さを指摘した。しかし、当時からウクライナは戦略的な防衛力の強化に成功していた。同盟国からの新型兵器の供与や、自国での生産体制の整備が進み、戦況は徐々に好転しつつある。

ロシアの情報工作にもかかわらず、ウクライナの防衛力は着実に向上している。米国や欧州諸国からの支援は、単なる消耗戦の継続ではなく、戦局を有利に導くための戦略的投資として機能しつつある。