米国時間の先週、CNBCの経済番組「スクウォークボックス」に出演したドナルド・トランプ前大統領は、アップルやアマゾンなどの企業が過去1年間に支払った違憲とされた関税の払い戻しを申請していないとの報道に対し、「彼らが申請しないなら素晴らしいことだ。申請しなければ、私は彼らを記憶する」と発言した。
これは交渉のためのポーズではなく、法的権利を行使した企業に対し、象徴的な忠誠心のアピールを怠った企業を「記憶する」と公然と示唆した発言だった。米国政府は米輸入業者から計1,660億ドル以上の関税を徴収したが、最高裁はこれを大統領権限の越権行為と判断した。関係企業は、違法とされた関税制度に対し、最高裁の判断が下った後も、あえて払い戻しを求めないことで政府側に立った姿勢を示した。暗に示唆されたのは、法的権利を行使した企業は「記憶」されるが、その評価は決して「素晴らしい」ものではないというメッセージだ。
イラン情勢や数々のスキャンダルで注目を浴びる中、この発言は見過ごされがちだが、違法な関税制度の影響を受ける企業が最終的にどのような行動を取るのか、注視する価値はある。
関税制度の背景と最高裁の判断
昨年導入された関税は、事実上世界中の国々との米国の貿易に影響を及ぼしたが、最高裁は2月に6対3の判決でこれを違憲と判断し、1,660億ドルの払い戻しを命じた。この判断は明確なものだったが、それでも企業が大統領の「ご機嫌取り」を考慮する可能性は否定できない。
トランプ政権は、合併や規制、さらには企業の経営介入に至るまで、民間経済に異例の強い影響力を及ぼしてきた。しかし、今回の発言は、企業が決して屈してはならない圧力の一例だ。株主や顧客を裏切る行為に等しいからだ。
企業が払い戻しを求めるべき理由
まず、上場企業の役員や経営陣には株主に対する受託者責任がある。数百万ドル、場合によっては数十億ドルに上る払い戻しを放棄することは、この責任に反する行為だ。また、ブランドイメージの観点からも問題がある。多くの企業は関税コストを価格転嫁していた。しかし、払い戻しを求めないということは、顧客に対し「私たちはコストを回収しないことを選択した。大統領が喜ぶからだ」と伝えるようなものだ。
対照的に、コストコは払い戻しを求める強硬な姿勢で注目を集めている。2025年11月には、最高裁の判決よりも前から、違法な関税を巡る連邦訴訟を起こし、支払った全額と利息の払い戻しを求めた。同社の経営陣は投資家に対し、払い戻し分を「より低い価格とより良い価値」として顧客に還元すると説明している。この姿勢は、法的権利を行使することが企業にとっていかに重要かを示す好例だ。
法的権利を行使することの意義
企業が違法な関税の払い戻しを求めることは、単に金銭的な損失を回避するだけでなく、法の支配を重視する姿勢を内外に示す行為でもある。顧客や株主は、企業が法的権利を行使することで、その透明性と責任感を評価するだろう。また、こうした行動は、将来的に同様の不当な圧力に屈しないための基盤ともなる。
トランプ氏の発言は、企業に対し「忠誠心」を求める圧力の一形態だが、企業は株主や顧客、そして法の支配に対する責任を優先すべきだ。払い戻しを求めることは、単なる経済的利益の追求ではなく、企業の社会的責任の一環でもあるのだ。