米国で研修中の外国人医師約数百人が、連邦政府によるビザ免除申請の処理遅延により、7月30日までに承認されなければ帰国を余儀なくされる可能性がある。J-1ビザ免除プログラムは、医師不足の地域で3年以上勤務することを条件に、米国滞在を認める制度だ。しかし、保健社会福祉省(HHS)が運営する同プログラムの申請処理が大幅に遅れており、現地の弁護士らが深刻な影響を指摘している。

ニューヨークで精神科医として勤務予定のある欧州出身の医師は、KFF Health Newsの取材に対し、「患者が最も大きな被害を受ける。3カ月後には、医師が必要な地域で数百カ所の医療機関が機能しなくなる」と語った。同医師は、HHSの交換訪問者プログラムを通じてJ-1ビザ免除を申請したが、処理が滞っているという。

これまでHHSのプログラムは、申請から1〜3週間で審査を完了していた。しかし、現在では数百件の申請が滞留しており、さらに国務省による審査と米国市民権・移民局(USCIS)の承認が必要な状況だ。弁護士4人によると、7月30日までにUSCISへの申請が進まなければ、医師らは母国への帰国を余儀なくされる可能性が高いという。

帰国後に再入国するには、新たにH-1Bビザを取得する必要があり、その際の費用は10万ドルに上る。この費用負担が、医師不足の地域にある病院やクリニックにとって大きな障壁となっている。

医療現場への影響

シカゴを拠点とする移民専門弁護士のチャールズ・ウィンタースティーン氏は、「この問題は、まさに崖っぷちに向かう列車のような状態だ」と危機感をあらわにする。同氏によると、米国の大学院医学教育の多くはメディケアによって資金が賄われており、納税者が負担した研修費の恩恵を受けられない状況に陥るという。

J-1ビザ免除を申請する医師を雇用する医療機関は、米国人労働者でポストを埋められなかったことを示す必要がある。しかし、医師の到着が遅れたり、そもそも来られなくなったりすれば、患者はさらに長期間、医師不在の状態で待たされることになる。

HHSの対応

HHSのスポークスパーソンであるエミリー・ヒリヤード氏は、保留中の申請件数や遅延の原因について回答を避けた。しかし同氏は、2025会計年度の臨床J-1ビザ免除申請と、一部の2026会計年度分については審査を完了したと述べた。また、HHSは「将来的な遅延を防ぐためのプロセス改善を実施中」であり、7月30日の期限に向けて「残りの申請を慎重に評価している」としている。

「医師不在の地域では、患者の医療アクセスがさらに悪化する。これは単なるビザの問題ではなく、人命に関わる問題だ」
—— 医療関係者