メーガン・ジー・スタリオン、ネット中傷者への恒久的接触禁止命令を申請も却下される
フロリダ州南部地区連邦地裁のセシリア・アルトナガ判事は20日、グラミー賞受賞ラッパーのメーガン・ジー・スタリオン(本名:メーガン・ジョリーン・ペテス)が、オンラインパーソナリティのミラグロ・グラムズ(別名:モブズ・ワールド)に対し起こした名誉毀損訴訟において、恒久的な接触禁止命令の申請を却下した。
同訴訟は、2022年にカナダ人ラッパーのトーリー・レーンス(本名:デイスターパーソン)がメーガンに対し銃器を用いて暴行を加えた罪で有罪判決を受けた事件に端を発する。メーガンは、ミラグロ・グラムズが報復目的で自身に対する中傷キャンペーンを展開したと主張。2025年11月の陪審裁判では、名誉毀損、改変された性的画像の拡散(フロリダ州法違反)、および故意の精神的苦痛の賠償として7万5000ドルの支払いが認められた。
申請された接触禁止命令の内容
メーガン側は、ミラグロ・グラムズに対し以下の恒久的接触禁止命令を求めていた。
- 直接・間接・第三者を介した接触の全面禁止
- 自宅や滞在予定地から500フィート(約152メートル)、音楽パフォーマンス会場から1000フィート(約305メートル)の距離を保持
- プライベートな個人情報の開示禁止
- 改変された性的画像(ディープフェイク動画含む)の拡散・送信の禁止
- トーリー・レーンス裁判における証言、精神状態、アルコール摂取、家族に関する中傷発言の禁止
- 第三者に対しメーガンや関係者への脅迫・加害を扇動する発言の禁止
- ハラスメント、脅迫、ストーキング、なりすまし、その他の迷惑行為の全面禁止
- 陪審の評決に関する全発言・投稿の削除命令
憲法修正第1条の観点から却下
しかし、アルトナガ判事は、これらの申請は憲法修正第1条(言論の自由)に抵触する「事前抑制(prior restraint)」にあたると判断し、却下した。
判事は意見書の中で、事前抑制の是非について連邦巡回裁判所間で見解が分かれていることを指摘。一部の裁判所は事前抑制を「絶対的に違憲」とみなす一方で、他の裁判所は「限定的な状況下であれば、有罪判決後に限定的な接触禁止命令は許容される可能性がある」としていると述べた。また、第11巡回区控訴裁判所は未だ判断を示していないものの、6つの連邦巡回裁判所は「事実審理後の限定的な恒久的接触禁止命令は憲法上許容される」との立場を示していると説明した。
その一方で、判事は「たとえ現代的な立場を採用したとしても、メーガン側の申請は認められない」と結論付けた。その理由として、以下の点を挙げた。
- 経済的余裕のない中傷者に対する追加的抑止力として機能しない:メーガン側は、ミラグロ・グラムズが経済的に困窮しており、接触禁止命令がさらなる中傷行為を抑止する効果があると主張したが、判事はこれを否定した。
- 申請内容が曖昧で、特定の発言に限定されていない:メーガン側は、トーリー・レーンス裁判に関連する発言や精神状態、アルコール摂取、家族に関する発言を全面的に禁止するよう求めたが、これらは2025年11月の陪審裁判後に行われた発言に限定されていないため、過度に広範であると判断された。
メーガン側の主張と今後の展開
メーガン側は、ミラグロ・グラムズによるサイバーストーキング行為がエスカレートしていると主張。特に、改変された性的画像の拡散が自身の名誉を著しく傷つけているとして、強硬な措置を求めてきた。しかし、今回の判断により、当面は法的手段による直接的な抑止が困難となった。
今後、メーガン側は、既存の7万5000ドルの賠償金に加え、さらなる法的措置を検討する可能性がある。一方で、ミラグロ・グラムズ側は、言論の自由の観点から今回の判断を歓迎するとみられる。
「裁判所は、言論の自由と個人の名誉保護のバランスをいかに取るかという難しい課題に直面している。今回の判断は、そのバランスの難しさを象徴するものだ」
—— 法学者のコメント