米国ルイジアナ州は、中絶薬(ミフェプリストン)の処方規制を緩和した米食品医薬品局(FDA)の責任を主張し、男性が女性の飲み物に中絶薬を混入させるケースが増加しているとの見解を示している。同州はこの主張を基に、最高裁判所が注目する訴訟を起こしたが、その根拠は極めて薄弱だ。

同州の主張によれば、遠隔処方が可能になったことで、加害者が他州の医師から中絶薬を入手し、女性の飲み物に無断で混入させるという。しかし、こうした事例が実際に起きているという証拠はほとんど存在しない。ルイジアナ州の訴状にも、具体的な事例は一切記載されていない。

専門家らは、もしこのような事件が頻発しているならば、全国的な報道や訴追、裁判沙汰になっているはずだと指摘する。実際に2023年以降、米国全土で確認された中絶薬混入の疑い事例は、テキサス州で4件、他州(マサチューセッツ、イリノイ、オハイオ)で3件にとどまる。これらの事例の多くは立証されておらず、中絶が合法な州で発生したケースも含まれる。また、薬の入手経路や遠隔処方との関連性も不明確だ。

保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」の報告書(2024年3月)でも、過去17年間で確認された中絶薬混入の疑い事例はわずか7件に過ぎない。ルイジアナ州はさらに、遠隔処方により女性が「意思に反して薬を服用させられる」リスクが高まったと主張するが、その具体例として挙げられた原告のロザリー・マルケジッチ氏のケースでも、薬の入手経路や強制の実態は明確ではない。

ルイジアナ州は2023年、FDAが中絶薬の対面処方義務を廃止したことを受け、米保健社会福祉省(HHS)やロバート・F・ケネディ・ジュニア氏らを相手取り、訴訟を起こした。同州は、中絶が事実上禁止されているルイジアナで、遠隔処方が中絶アクセスの「最後の手段」となっていると指摘する。しかし、規制緩和が中絶薬の強制服用に直結するという主張には、専門家からも疑問の声が上がっている。

女性のリプロダクティブ・ライツを巡る議論は依然として激化しており、ルイジアナ州の主張は、規制強化を求める保守派の主張を裏付ける根拠として注目を集めている。しかし、その実態は依然として不明確であり、科学的・法的な裏付けに乏しいのが現状だ。

出典: Reason