米最高裁判所は11月17日、Hencely v. Fluor Corp.事件で6対3の判決を下した。この判決は、連邦優先の原則(federal preemption)を巡る保守・リベラルの意見の分裂という点で注目を集めている。
多数意見を執筆したのは、保守派のトーマス判事で、リベラル派のソトマイヨール、カガン、ゴーサッチ、バレット、ジャクソン各判事がこれに同調した。一方で、アルイト判事は、ロバーツ長官とカバノー判事と共に反対意見を発表した。
連邦優先の原則を巡る保守派の分裂
一般的に、保守派は連邦優先の原則を支持すると考えられがちだが、この事件ではそうではなかった。トーマス判事は連邦優先の原則に長年懐疑的な立場を取っており、連邦政府が州の権限を侵害すると主張してきた。例えば、2009年のWyeth v. Levine事件では、リベラル派と共に連邦優先を否定する判決を支持した。
同様に、ゴーサッチ判事も連邦優先に懐疑的な立場を示しており、バレット判事は今回の事件でトーマス判事とゴーサッチ判事に同調した。一方、ロバーツ長官、アルイト判事、カバノー判事は、伝統的な保守派の立場を取り、連邦優先の原則を広く支持する傾向にある。
トーマス判事が多数意見を自ら執筆
今回の判決で注目すべきは、トーマス判事が自ら多数意見を執筆した点だ。ロバーツ長官が反対意見を示すことは稀であり、トーマス判事が多数派に属しながらロバーツ長官が少数派に回るケースは少ない。上級判事であるトーマス判事が多数意見を割り当てる機会は非常に限られている。
次週の注目判決「Monsanto Company v. Durnell」への影響
この事件自体は大きな注目を集めるものではないが、次週に控えるMonsanto Company v. Durnell事件への影響が懸念される。同事件は、除草剤ラウンドアップに関する連邦優先の原則を巡るもので、農業市場に大きな影響を与える可能性がある。
一般的には、保守派が勝利すると考えられがちだが、事態は単純ではない。双方の当事者が優秀な弁護士を起用しており、モンサント社側をポール・クレメントが、ダーネル側を保守派の有力な原告側弁護士であるアシュリー・ケラーが担当している。ケラーはMallory事件で「International Shoe」の判例を覆す寸前まで追い込んだ実績を持つ。さらに、ケラーは「The Genius」の異名を持つジョナサン・ミッチェルと共同で弁論書を提出している。
Hencely事件の判決が示すように、モンサント社が5票を獲得するのは難しいかもしれない。ダーネル側は、ポール・クレメントをLoper Bright事件に関連付ける巧妙な戦略を取っており、今後の展開が注目される。
「事態は単純ではない。双方が優秀な弁護士を起用しており、今後の展開に注目が集まる」