米国防長官ピート・ヘグセス氏は、ジョー・バイデン政権の軍事政策を批判したアリゾナ州選出のマーク・ケリー上院議員(民主党)に対し、軍の規律を害する発言を理由に処罰する権限があると主張している。この主張を巡り、ヘグセス氏は2月12日にワシントンD.C.地区連邦地裁のリチャード・レオン判事が下した仮差し止め命令の取り消しを控訴審で求めたが、同控訴裁判所は13日の口頭弁論でヘグセス氏の主張に強い抵抗を示した。

ケリー議員は、軍人への「違法な命令には従う必要はない」との発言を含む動画に出演したことを理由に、ヘグセス氏から懲戒処分を受ける可能性がある。レオン判事は、ケリー議員の発言は憲法で保護される表現の自由に該当すると判断し、ヘグセス氏による処罰を差し止めた。ヘグセス氏はこれを不服としてD.C.巡回控訴裁判所に控訴していた。

議員の発言は「保護される政治的表現」

ケリー議員の代理人ベンジャミン・マイザー弁護士は、ヘグセス氏による処罰は「好ましくない発言に対する典型的な報復」だと主張した。特に、ヘグセス氏が1月5日にケリー議員に送付した懲戒文書には、議員の発言を直接的に批判する内容が含まれていると指摘した。

「軍指導者が提督や将軍を解任したことへの批判」「側近を『イエスマン』ばかりに囲んでいることへの批判」「憲法を守ることを公言したこと」などが、懲戒の理由として挙げられている。これらの発言は、ケリー議員が上院軍事委員会と上院情報委員会のメンバーとして軍を監督する憲法上の義務に基づくものであり、退役軍人であり軍の年金受給者であるという事実が、ヘグセス氏に報復を正当化する根拠にはならないとマイザー弁護士は主張した。

ヘグセス氏の主張は1974年の判例に依拠

ヘグセス氏の主張は、1974年の最高裁判決「パーカー対レヴィ事件」に基づいている。同事件では、ベトナム戦争時に軍人への配備命令拒否を公に呼びかけた現役将校に対し、軍法会議が下した刑期が支持された。判決は軍隊という「特殊な社会」における服従の必要性を強調し、通常であれば憲法違反となる表現規制を正当化した。

しかし、ケリー議員の場合、退役軍人という立場が異なる。控訴審では、この違いが争点となった。ジョン・ベイリー米司法省弁護士は、退役軍人にも同様の規制が適用されるべきだと主張したが、3人の裁判官のうち2人はその主張に同意しない姿勢を見せた。

控訴審の判事、ヘグセス氏の主張に疑問示す

バラク・オバマ前大統領が任命したニーナ・ピラード判事は、ケリー議員とパーカー事件のハワード・レヴィ陸軍軍医を比較し、ヘグセス氏の主張に疑問を呈した。レヴィは現役将校であり、ケリー議員は退役軍人である点が異なると指摘した。また、ヘグセス氏が懲戒文書でケリー議員を「軍の規律を損なう発言を繰り返す者」と表現したことについても、その正当性が問われた。

今後、控訴審ではさらに議論が続けられ、ケリー議員の発言が憲法で保護される表現の自由に該当するかどうかが改めて問われる見通しだ。

出典: Reason