2009年に「UberCab」としてスタートした配車サービスのウーバーは、今や移動そのものよりも、アプリを通じた移動前後のサービスに注力する企業へと変貌を遂げている。同社の戦略転換を象徴するのが、ニューヨークで開催されたイベント「Go-Get」だ。会場には「車のキー」ではなく「ホテルのキー」が象徴的に掲げられ、CEOのダラ・コスロウシャヒ氏は「ウーバーの真のサービスは、お客様に時間を返すことです」と語った。
同イベントで発表された新機能は、ライドシェアのライバルであるリフトではなく、サンフランシスコに拠点を置くAirbnbとの比較を招いた。Airbnbが「体験」や「 boutique ホテル」の提供に乗り出すように、ウーバーもまた、アプリを通じて旅行のあらゆる段階で必要とされるサービスを提供することを目指している。しかし、その野心的なビジョンを掲げた「One app for everything(すべてを網羅する1つのアプリ)」というキャッチフレーズには、顧客にとってのメリットが本当にあるのかという疑問も残る。
ホテル予約機能で Expedia の強みを取り込む
イベントの目玉となったのが、アプリ内でのホテル予約機能だ。この機能は、かつてコスロウシャヒ氏がCEOを務めていたExpediaの検索機能を組み込み、ウーバーの決済システムを通じて提供される。製品担当副社長のアミット・フラヤ氏はステージ上で「ホテルの予約も、乗車と同じくらい簡単にできるようになります」と語った。
さらに、月額9.99ドルの「Uber One」会員(2025年4月に米連邦取引委員会から虚偽広告の疑いで提訴された)向けには、追加特典が用意される。スライドに記載された小さな字によれば、特定のホテルで「20%以上の割引」が適用され、さらに10%のUber Oneクレジットが還元されるという。しかし、専門家によれば、第三者サイトを通じたホテル予約では、ホテルチェーン独自のロイヤルティポイントやステータスが失われることが多い。ウーバーのアプローチは、そのロイヤルティ機能を自社に取り込むものであり、Expediaの「One Key」プログラムと同様の仕組みだ。
顧客にとってのメリットは?
ウーバーのアプリでは、価格やレビュー、アメニティなどでホテルを絞り込むことができるが、デフォルトの表示順は明確にされていない。筆者がイベント中にシカゴのダウンタウンで5月8日から10日のホテルを検索したところ、トランプ・インターナショナル・ホテル&タワーが1位に表示され、割引後の合計金額は1,322ドルだった。しかし、ループ周辺の高級ホテルの中には、より良い選択肢も存在した。その後、ワシントンD.C.に戻って再検索を試みたところ、アプリ上でホテル検索機能が「近日公開」と表示され、利用できなかった。
また、アプリ内でホテルブランドの表示順をカスタマイズできるかどうかについて、ウーバーの広報担当者は明確な回答を示していない。このため、ユーザーは自らの好みに合ったホテルを見つけにくい可能性がある。
「ウーバーのホテル予約機能は、使いやすさという点では優れているかもしれないが、ロイヤルティプログラムの損失というトレードオフを理解しておく必要がある」と、旅行業界の専門家は指摘する。
「時間を返す」というビジョンの実現に向けて
ウーバーは、アプリを通じて移動前のホテル予約から、移動中の乗車、さらには移動後のショッピングやレストラン予約まで、一連のサービスをワンストップで提供することを目指している。しかし、その実現には、顧客のロイヤルティを奪うリスクや、他社との競争激化といった課題が伴う。今後、ウーバーが「時間を返す」というビジョンをどのように実現していくのか、注目が集まる。