米ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)は11月7日、パラマウント・グローバルとの11兆円規模の合併案について、株主総会で承認を得た。これにより、同社は合併に向けた大きな節目を通過したが、本格的な交渉はこれから始まる。
同社は声明で「株主承認は、パラマウントの買収に向けた重要なマイルストーンであり、今後数か月で取引を完了し、次世代型メディア・エンターテインメント企業を創出する」と述べた。しかし、米司法省の承認は順調と見られるものの、英国の競争市場庁(CMA)や欧州委員会による規制審査が控える。加えて、米国の安全保障審査機関・CFIUS(対外投資委員会)による国家安全保障上の審査も懸念材料となっている。
特に注目されるのが、中東の主権ファンドによる2兆4000億円規模の投資だ。パラマウントは「CFIUSによる強制審査は不要」と主張しているが、米議員らは審査を求めている。規制当局の承認だけでなく、州レベルの反トラスト法訴訟も合併阻止のカギを握る。
州司法長官の動きが合併阻止の鍵に
米国では、州司法長官が反トラスト法に基づく訴訟を起こすことで、連邦規制当局の承認を回避し、合併を阻止する可能性が浮上している。実際、最近の州司法長官の活躍は目覚ましい。
- ライブ・ネイション事件:30以上の州司法長官が独占禁止法違反でライブ・ネイションとチケットマスターを提訴。連邦政府や他州が和解に動く中、州側は単独で訴訟を継続し、陪審員は同社が独占的行為を行っていたと認定した。
- ネクスター・テグナ合併差し止め:連邦通信委員会(FCC)が承認したネクスター・テグナの合併を、カリフォルニア州司法長官らが提訴。米連邦地裁は合併の差し止めを命じ、州側が勝利した。
これらの動きは、州司法長官が連邦規制当局の承認に依存せず、独自の法的戦略で合併を阻止できる可能性を示している。カリフォルニア州のロブ・ボンタ司法長官は「法的措置の検討は継続中」と述べており、今後他州も同様の動きを見せる可能性がある。
合併完了までのタイムリミットとリスク
WBDとパラマウントは、合併を2024年第3四半期までに完了させる計画だ。しかし、期限内に完了できない場合、WBDの株主には1株当たり25セントの「遅延手数料」が支払われる。さらに、規制上の理由で合併が成立しない場合、パラマウントはWBDに7兆円の解約金を支払う義務を負う。
一方で、ハリウッド業界や労働組合、映画館業界団体などは、この合併に強く反対している。ジェーン・フォンダ氏が率いる「ファースト・アメンダメント委員会」は声明で「この合併はまだ決着したわけではない。戦いはこれからだ」と訴えている。
「株主承認は簡単な部分に過ぎない。本格的な戦いはこれから始まる」
— 規制法専門弁護士ブラデン・ペリー(TheWrapの取材に対し)
合併の行方は、規制当局の審査だけでなく、州レベルの法的闘争にも左右される。今後数か月で、メディア業界の再編が大きく動く可能性がある。