米国政府はこのほど、デザイナーのピーター・アーネル氏を「チーフ・ブランド・アーキテクト」に任命した。同氏の新たな役割は、米国政府の対外的なイメージやデジタルサービスの改善に大きな影響を与える可能性がある。

アーネル氏はこれまで、ペプシコ、マクドナルド、アップル、リーボック、ディズニーなど、世界的な企業と数多くのプロジェクトを手掛けてきた。写真、デジタルインターフェース、実物製品に至るまで幅広い分野で活躍し、そのクリエイティブなアプローチは「シンプルで洗練され、かつ大胆」と評されることが多い。

新体制の下で進む政府のデジタル改革

アーネル氏は、ジョー・ゲビア氏(Airbnb共同創業者で、米国政府のチーフ・デザイン・オフィサー)の下で活動する。同氏は2025年1月に設立された「National Design Studio」の一員として、連邦政府のデジタルサービスの「使いやすさと美しさ」向上を目指すプロジェクトを推進している。これまでの主な取り組みには、処方薬提供サイト「TrumpRx」の立ち上げタンパク質を重視した新しい食品ピラミッドの策定ホワイトハウス公式サイトの大統領応援動画化などが含まれる。

アーネル氏の役割は、米国政府の統一されたデザインとブランドシステムの戦略的・クリエイティブな開発をリードし、国民と政府のあらゆる接点を明確かつ一貫性のあるものにすることだ。具体的には、社会保障システムやパスポート取得プロセスの見直しから始めるという。ゲビア氏は建築専門誌Dezeenとのインタビューでこのように説明した。

連邦政府のデジタル改革、その背景と規模

連邦政府のデジタルプレゼンス改革は、実は数年前から計画されていた。バイデン政権下の2024年、2023年に収集されたデータから、1万以上の連邦政府ウェブサイトのうち、45%がモバイル対応されておらず、60%にアクセシビリティの問題があったことが判明した。当時、専門家はこの再設計に約10年かかると試算していた。現在稼働中の連邦政府ウェブサイトは2万7,000以上に上るとアーネル氏は述べているが、正確な数は不明だ。

いずれにせよ、アーネル氏の新たな役割は膨大な規模であり、数千に及ぶデジタル体験に影響を与える可能性がある。同氏は30年以上にわたるデザイン経験を持ち、象徴的な米国ブランドのプロジェクトを数多く手掛けてきた一方で、失敗と批判の歴史も有している。(取材時点ではアーネル氏からのコメントは得られていない。)

30年以上にわたるブランド戦略の軌跡

アーネル氏は1993年に自身のデザイン会社「Arnell Studio」を設立し、2011年まで最高クリエイティブ責任者を務めた。2012年にはマルチディシプリンのコンサルティングファーム「Intellectual Capital Investments」を設立し、現在もデザイナー兼CEOとして活躍している。

これまでのキャリアで手掛けた主なプロジェクトには、ホームデポの商品開発Mug Root Beer缶の犬のデザインジープの展示会ディズニーの眼鏡デザインアップルの広告制作などがある。2009年のi-D誌のプロフィール記事に掲載された「彼は複数の分野(デザイン、ブランド、マーケティング、建築、写真)を横断し、それらを融合させることで新たな形を生み出す」という言葉は、今もなお彼のアプローチを的確に表している。