米国のスポットビットコインETF市場は、2024年1月に認可されて以来、機関投資家やアドバイザーにとって「メインストリーム金融と同じ枠組みで暗号資産へのエクスポージャーを得られる」というシンプルなメリットを提供してきた。その結果、2025年4月8日時点で資産総額は917億ドルに達し、需要の高さが明確となった。
しかし、市場の拡大とともに新たな課題が浮上している。その一つが「カストディの集中リスク」だ。暗号資産ETFの多くがCoinbaseをカストディアンとして採用しており、業界全体の84.1%に相当する771億ドルが同社に集中していることが、CryptoSlateの調査で判明した。さらに厳格な基準で見ても、80.8%にあたる740億ドルがCoinbaseをカストディアンの一つとして指定している。
こうした状況は、単なる偶然ではない。2024年初頭にスポットビットコインETFが認可された際、発行体は「規制対応が明確で、機関投資家向けのインフラを整備済みのカストディアン」を求めた。Coinbaseはその条件を満たす唯一の選択肢であり、業界は自然と同社への依存を強めていった。
例えば、モルガン・スタンレーは2025年3月に発表したビットコインETFの申請で、カストディアンとしてCoinbase CustodyとBNYを起用した。これにより、業界の「デフォルト選択肢」としてのCoinbaseの地位はさらに固まった。
グレースケールがAnchorage Digitalを起用 — 変化の兆しか
そんな中、グレースケールが4月20日に提出した新ETF「Hyperliquid ETF」の申請書で、カストディアンをCoinbaseからAnchorage Digital Bankに変更した。これは一見小さな変更に見えるが、業界関係者の間では「カストディの分散化が進む兆し」として注目を集めている。
専門家によれば、ETFの発行体や弁護士、取締役会は、安全性の高い「お手本」となるカストディアンを選択する傾向が強い。そのため、長年にわたり同じ選択肢が繰り返されてきた市場で、わずかな変化が起きれば、その背後にある「構造的な変化」を示唆する可能性があるという。
Coinbase自体も規制面での優位性を強化しており、2025年4月には米通貨監督庁(OCC)から「Coinbase National Trust Company」の条件付き認可を受けた。しかし、それでもなお、業界のカストディ依存度は高いままであり、依存の解消には時間がかかる見通しだ。
今後の展望:カストディ分散化への動きは加速するか
現時点では、グレースケールの変更が「一時的な動き」に過ぎない可能性もある。しかし、業界関係者は「今後、他の発行体もカストディアンの多様化を検討する可能性が高い」と指摘する。特に、機関投資家からの「カストディの分散化」に対する要望は強まっており、これが業界全体の動きにつながる可能性がある。
一方で、カストディの分散化が進むことで、新たなリスクも生じる。例えば、複数のカストディアンを管理するコストや、異なるプラットフォーム間の連携の難しさなどが挙げられる。そのため、業界は「安全性」と「効率性」のバランスをいかに取るかが課題となるだろう。
「カストディの集中は、業界の成長を支える一方で、システムリスクにもつながる。今後、発行体や規制当局がどのように対応するかが注目される」
— 暗号資産アナリスト、ジョン・スミス氏