ネブラスカ州が全米初のメディケイド就労要件を前倒し実施
米国のネブラスカ州が、2025年5月23日、全米で初めてメディケイド拡大州に義務付けられた就労要件を導入した。同州は期限の2027年1月1日より7カ月前倒しで実施しており、これにより65歳未満の約7万人のメディケイド受給者が医療保険を失う可能性が生じている。
就労要件は雇用促進につながらず、むしろ医療アクセスを奪う
メディケイドの就労要件は、受給者に就労を義務付ける政策だが、実際には雇用の増加にはつながらないことが指摘されている。むしろ、複雑な手続きや書類手続きの負担が増えることで、多くの受給者が医療保険を失う結果となっている。
また、メディケイド受給者の多くは既にフルタイムまたはパートタイムで働いており、 Supplemental Security Income(SSI)を受給していない人々が大半を占める。このため、就労要件の導入は「働ける人を対象にした政策」という主張が事実に基づかないものであることが浮き彫りとなっている。
専門家らが就労要件の即時撤回を求める
政策シンクタンク「Center on Budget and Policy Priorities」は、就労要件の導入に十分な準備期間がなく、受給者の医療アクセスを奪うリスクが高いと警鐘を鳴らしている。同団体は、就労要件の撤回を求めるとともに、撤回できない場合でも各州に対し、受給者の医療保護を最優先にした政策の見直しを求めている。
「就労要件は、受給者の医療保護を最優先にした政策に置き換えるべきだ。そうでなければ、多くの人が医療保険を失うことになる」
Center on Budget and Policy Priorities
ロバート・F・ケネディJr.保健福祉長官の暫定規則が注目される
今後、米国保健福祉省(HHS)のロバート・F・ケネディJr.長官が6月1日に発表する暫定規則が、就労要件の実施内容に大きな影響を与える可能性がある。専門家らは、ケネディ長官が提案する基準により、慢性疾患や自己免疫疾患を抱える人々が「就労可能」と判断されるリスクを指摘している。
例えば、慢性的な痛みや重度の自己免疫疾患を抱える人々は、社会保障障害給付の受給資格を得られない場合でも、ケネディ長官の基準では「就労可能」と見なされる可能性がある。HHSは取材に対し、メディケイドの保護と強化を目指す一方で、不正や無駄の排除にも取り組むとの一般的な声明を発表するにとどまった。
ネブラスカ州の就労要件、免除条件は限定的
ネブラスカ州のメディケイド就労要件には、慢性疾患や妊娠など一部の免除条件が設けられている。しかし、免除条件の対象となる疾患リストは限定的であり、例えば「ロングコビッド」は含まれていない。ロングコビッドは、新型コロナウイルス感染後に発症する持続的な症状により、就労が困難になるケースが多い疾患だが、同州の免除条件には該当しない。
ジョージタウン大学のエドウィン・パーク教授は、昨年のインタビューで「どの州も、障害を持つ人々をこれらのカットから守ることはできないだろう」と述べ、就労要件が障害者の医療アクセスを脅かす可能性を指摘していた。
今後、全米に拡大するメディケイド就労要件の行方
ネブラスカ州の動きを皮切りに、全米のメディケイド拡大州で就労要件の導入が進む可能性がある。しかし、専門家らはその実施が受給者の医療保護を脅かすだけでなく、社会的な不公平を助長する可能性を懸念している。今後、各州の政策やHHSの規則次第で、数万人の医療保険が失われるリスクが現実のものとなる。