中国EVの米国上陸は「不可能」でも、ソーシャルメディアでは大ブーム
米国では、中国製電気自動車(EV)の販売が事実上禁止されている。しかし、ソーシャルメディア上では、中国製EVが次々と紹介され、多くの米国人がその存在を知るようになった。米国の新車購入者の3分の1が、中国製EVの購入を検討していると回答するなど、その人気は無視できないレベルに達している。
DCarが仕掛ける、米国インフルエンサーを活用した巧妙なマーケティング戦略
北京の自動車コンテンツプラットフォーム「DCar」は、米国のインフルエンサーに中国製EVのテストドライブを依頼し、動画や投稿を通じてその魅力を伝える戦略を展開している。DCarは、バイトダンス(TikTokの親会社)から2023年にスピンアウトした企業で、中国国内では1日1000万人以上のアクティブユーザーを抱える。同社は、米国の人気インフルエンサーに対して、自社で車両を手配し、報酬を支払う形でコンテンツ制作を支援している。
例えば、YouTuberのリチャード・ブノワ(Rich Rebuilds)は、2025年初頭にDCarの招待でアラスカを訪れ、BYDの「Fangchengbao」やWulingの「Bingo」などの中国製EVをテストドライブした。DCarは、ブノワの渡航費用と、安価な中国製EV1台分の報酬を支払い、その模様を動画として公開してもらった。同社は、車両の購入やレンタルを自社で行い、メーカーの関与は一切ないと主張。これにより、客観性と信頼性を維持しつつ、中国製EVの魅力を米国市場にアピールしている。
インフルエンサーの投稿がもたらす驚異的な効果
米国の人気テック系YouTuberであるマーキュス・ブラウンリー(Marques Brownlee)は、2024年に米国で「Xiaomi SU7」をテストドライブし、その動画は1000万回以上再生された。この動画1本で、Xiaomiは120万ドル相当の無償のブランド露出を獲得したとされる。さらに、この動画の影響で、XiaomiのTikTokフォロワー数は2025年に20%増加し、その半数以上が米国ユーザーだったという。
また、中国EVマーケットプレイスによると、ブラウンリーの動画公開後、米国から1000件以上の価格照会が寄せられた。しかし、これらの多くは、SU7のような中国製EVが米国で登録や保険加入ができない事実を知らない状態で行われたものだった。
中国ブランドの米国市場参入は「まだ先」でも、その影響力は拡大中
BYDやXiaomiなどの中国ブランドは、現時点で米国での乗用車販売を計画していないと表明している。しかし、DCarを通じたインフルエンサー戦略により、米国市場におけるブランド認知度は着実に向上。既存の自動車メーカーは、この動きに警戒を強めている。
中国製EVが米国で販売されていないにもかかわらず、その人気は高まり続けている。今後、規制が緩和された際には、米国の自動車市場に大きな変化をもたらす可能性がある。
主な中国製EVとインフルエンサーの反応
- BYD Fangchengbao:DCarが招待したインフルエンサーによってアラスカでテストされたモデル。オフロード性能が注目を集めた。
- Wuling Bingo:小型で手頃な価格のEVとして、米国の若年層を中心に人気を集めている。
- Xiaomi SU7:マーキュス・ブラウンリーの動画で一躍注目を浴び、TikTokフォロワーが急増した。
米国における中国製EVの現状と課題
米国では、中国製EVの販売が禁止されているが、その理由は安全保障上の懸念や、米国の自動車メーカーとの競争力維持が主な要因とされている。しかし、ソーシャルメディアを通じた間接的なマーケティングにより、中国製EVは米国市場で確実に存在感を高めている。
今後、規制が緩和された場合、中国ブランドが米国市場に参入する可能性は否定できない。その際には、既存の自動車メーカーだけでなく、保険会社やディーラーなど、関連業界全体に大きな影響を与えることが予想される。