50年に及ぶ規制の歴史と延期の経緯

米国食品医薬品局(FDA)は2024年3月、障害のある子どもに対する電気ショックを処罰目的で使用することを禁止する新規制を発表した。この規制は長年の議論を経て導入されたものだが、実施が延期されていた。トランプ政権下で新たな指導部が方針を再検討し、判断を先送りしていた。

しかし、このたびFDAのウェブサイトで、近日中に正式な決定が下される見通しであることが明らかになった。自閉症や精神疾患のある子どもに対し、電気ショックを処罰として用いてきたマサチューセッツ州のJudge Rotenberg Educational Center(JRC)は、米国内で唯一この装置を使用していた施設だった。

JRCの実態:唯一の電気ショック施設

JRCは2007年の調査報道で注目を集めた施設で、自閉症や統合失調症などの精神疾患を抱える子どもに対し、電気ショックを「行動抑制」の手段として使用していた。例えば、コートを脱がない、叫ぶといった行動に対しても電気ショックが与えられていたという。

自閉症当事者団体「Autistic Self Advocacy Network」のZoe Goss代表は、「この拷問のような行為は、傷害、トラウマ、そして長期的な害を与えることが生存者や専門家の証言から明らかだ」と指摘する。

規制の範囲と例外

FDAの新規制が正式に発効すれば、JRCが使用していたような装置は市場から排除される。しかし、全ての電気刺激療法が禁止されるわけではない。例えば、禁煙治療やうつ病・双極性障害の治療に用いられる電気けいれん療法(ECT)などは対象外となる。

科学的根拠のない「治療」

電気ショックが知的・発達障害のある人の行動を抑制すると主張する人々もいるが、FDAはこれを否定している。それどころか、電気ショックには深刻な副作用が伴う可能性がある。

FDAの元製品評価・品質局長代行Owen Faris氏は2024年3月の声明で、「これらの装置は、うつ病、不安、基礎疾患の悪化、PTSDの発症といった心理的リスクに加え、痛み、やけど、組織損傷といった身体的リスクをもたらす」と述べた。

市民の声:圧倒的多数が規制を支持

規制策定過程では、約800人・団体から意見が寄せられた。その大半が規制の再導入を支持していた。

自閉症当事者のRiver Bradley氏は、「自閉症の人々には罰ではなく支援が必要だ。コートを脱がない、痛みで叫ぶといった行為に罰を与えるのは間違っている」とコメントした。

これまでの経緯

  • 2020年:FDAが自傷行為や攻撃的行動に対する電気ショックの強制使用を禁止する規制を発表
  • 2021年:連邦控訴裁判所がFDAの権限を疑問視し、規制を覆す
  • 2022年:下院が知的・発達障害のある人の行動抑制を目的とした電気ショックの使用を禁止する法案を可決したが、上院で審議未了に
  • 2023年9月:マサチューセッツ州最高裁がJRCによる子どもの電気ショックを容認する判決

今後の展望

近日中に下されるFDAの判断が、自閉症や発達障害のある子どもたちに対する電気ショック処罰の歴史に終止符を打つ可能性が高まっている。当事者団体や専門家らは、規制の実施を強く求めている。