ニューヨーク南部地区連邦地裁のジョージ・ダニエルズ判事は2日、ジャーナリストのマット・タイビ氏が提起した名誉毀損訴訟を棄却する判決を下した。

同訴訟は、ジャーナリストのマイケル・ヒギンズ氏が執筆し、Bold Type Booksから2023年に出版された書籍「Owned: How Tech Billionaires Bought the Loudest Voices on the Left」(以下「同書」)を巡るものだ。

同書は、テック業界の億万長者とかつての左派系ジャーナリストが結びつき、新たな右派メディアのエコシステムを形成した経緯を描いている。同書では、タイビ氏が独立系ジャーナリストとして活動していた頃の政治的立場の変化についても触れられており、特に2016年の米大統領選におけるロシア疑惑報道への批判や、過去の発言の再燃をきっかけに左派からの支持を失ったと主張している。

タイビ氏の経歴と同書の主張

同書によれば、タイビ氏はソ連崩壊後のロシアでジャーナリズムのキャリアをスタートさせ、2004年にはローリングストーン誌に加わり、2007~2008年の金融危機に関する銀行やウォール街の不正を報じて高い評価を得た。しかし、2016年の米大統領選におけるロシア疑惑報道への反論や、過去の発言が再浮上したことで左派からの支持を失い、次第に保守層へと傾倒していったとされる。

2020年にはローリングストーン誌を離れ、購読型ニュースレターサービスのSubstackに移籍。2022年にはイーロン・マスク氏がTwitter(現X)を買収し、同社の内部文書「Twitter Files」の公開プロジェクトを開始した。同書は、マスク氏がタイビ氏に対し、Twitter Filesの報道をX上で行う条件で文書のレビューを依頼したと記述している。

Twitter Files報道と影響

2022年12月2日、タイビ氏はTwitter Filesの初報を公開。その中で、2020年の大統領選前にTwitterがニューヨーク・ポスト紙のハンドラー・バイデン氏のラップトップに関する記事を検閲したことや、トランプ政権がTwitterに対してコンテンツの削除を頻繁に要求していたことを報じた。

同書は、このTwitter Filesプロジェクトを通じてタイビ氏の影響力が拡大し、Substackの購読者数が大幅に増加したと主張。その一方で、タイビ氏は同プロジェクトの2~3ヶ月間で4,844人の購読者が解約し、2万644ドルの収益減少に見舞われたと主張している。これは、タイビ氏が自身の記事をX上でも公開したことで、Substackの購読者から反発を受けたためとされている。なお、Twitter Files報道後にSubstackの購読者となったのは全体の13.7%だった。

マスク氏の提案とタイビ氏の拒否

2023年には、マスク氏がタイビ氏に対し、自身の新プラットフォーム「Twitter Subs」への移行を提案した。同プラットフォームでは「より多くの購読者を獲得できる」とマスク氏は主張したが、タイビ氏はこれを拒否。その理由として、「Twitterの従業員と見なされ、批判を浴びるだろう」と述べた。また、マスク氏は同プラットフォーム導入後、Substackへのリンクを含む全ての検索結果を一時的に非表示にする措置を取ったと同書は指摘している。

今回の判決により、タイビ氏の名誉毀損訴訟は棄却された。同書の内容が名誉毀損に該当しないと判断された形だ。

出典: Reason