米国最高裁判所で最も頻繁に意見を共にすることで知られるトーマス判事とアルイト判事が、2024-25年の任期中に97%の判決で一致した一方で、ごくまれに対立するケースが存在する。その象徴的な事例が、2025年6月24日に下された判決「ヘンシリー対フルオール社」だ。
この事件は、アフガニスタンのバグラム空軍基地でタリバン構成員による自爆テロが発生し、米陸軍のスペシャリストであるウィンストン・ヘンシリー氏が重傷を負ったことに端を発する。ヘンシリー氏は、爆撃犯を雇用していた軍事請負業者のフルオール社に対し、州裁判所で過失を理由に損害賠償を求める訴訟を起こした。
米陸軍の調査では、フルオール社が「現地採用従業員の適切な監督を怠った」と指摘されていた。問題は、ヘンシリー氏の州法に基づく過失訴訟が連邦法によって排除されるのか、それとも州の管轄権が及ぶのかという点だった。
トーマス判事「連邦法は州の司法権を侵害しない」
トーマス判事が多数意見を執筆し、ヘンシリー氏の州訴訟を認める判決を下した。その理由について、トーマス判事は「憲法や連邦法に州の通常の不法行為訴訟を排除する規定はなく、先例も存在しない」と述べた。この意見には、ソトマイヨール、カガン、ゴーサッチ、バレット、ジャクソンの各判事が賛同した。
アルイト判事「戦争権限の侵害だ」と反対意見
一方、アルイト判事は反対意見を表明し、連邦政府の戦争権限を侵害する州の司法介入に警鐘を鳴らした。アルイト判事は「州が戦争地帯の軍事基地の警備体制を規制できるのか?軍事的判断に州の裁判官や陪審員が介入すべきか?」と疑問を呈し、この訴訟は連邦の戦争権限に基づき州法が排除されるべきだと主張した。反対意見には、ロバーツ長官とカバノー判事が加わった。
異例の構図:民主党任命判事がトーマスを支持
この判決は、トーマス判事とアルイト判事の対立という稀有なケースであるだけでなく、トーマス判事が民主党系の判事全員(ソトマイヨール、カガン、ジャクソン)と結束した一方で、アルイト判事は保守派のロバーツ長官とカバノー判事のみを味方につけたという、異例の構図を生んだ。連邦主義の原則が、通常とは異なる司法上の同盟を形成した一例と言える。
トランプ大統領、出生権市民権訴訟で敗訴を予想
このほかの法廷ニュースとして、トランプ大統領が「バーバラ対トランプ」訴訟(出生権市民権を巡る争い)で敗訴するとの見方を示唆した。大統領はソーシャルメディアで「この件では負けるだろう」と発言した。