米国最高裁判所は6月8日、警察がスマートフォンの位置データを活用して犯罪現場周辺の人物を特定する「ジオフェンス令状」の合憲性が争われた事件「チャトリー対米国」の審理を行った。審議では、裁判官らが政府の追跡権限拡大に伴うプライバシー侵害のリスクを強く懸念する様子が見られた。

事件の概要:バージニア州ミッドロージアンの銀行で強盗事件が発生。警察はGoogleに対し、犯行時刻の1時間以内に銀行から半径150メートル圏内にいた人物の位置データを提出するよう令状を請求。このデータを基に容疑者が特定され、有罪判決を受けた。被告側は、この令状が憲法のプライバシー保護原則に違反すると主張した。

審議の前半:憲法解釈を巡る議論

審議の前半では、被告側弁護士アダム・ウニコウスキー氏が、憲法が政府によるスマートフォン追跡に厳格な制限を課していると主張。しかし、多くの裁判官はこの主張に懐疑的な態度を示した。特に、2018年の「カーペンター対米国」判決(警察は位置データ取得に令状が必要)を覆す可能性についても言及された。

審議の後半:プライバシー侵害の懸念拡大

政府側弁護士エリック・ファイギン氏の主張を受け、裁判官らの懸念はさらに深まった。ロバーツ長官は、政府がスマートフォン追跡を広範に認めれば、特定の宗教集会や政治集会に参加した人物の特定が可能になると指摘。他の裁判官からも、警察が令状なしで個人のメールやカレンダー、写真にアクセスできる可能性についての懸念が示された。

これらの議論を踏まえ、最高裁は「チャトリー対米国」において、警察がスマートフォン追跡を行う際には常に令状が必要とする判決を下す可能性が高いとの見方が強まっている。ただし、当該事件では実際に令状が取得されており、最高裁が今回の令状の合憲性を認める可能性もある。そのため、判決は現行のプライバシー保護を維持する一方で、大幅な拡大は見送られる「限定的なもの」になると予想される。

ジオフェンス令状とは

ジオフェンス令状とは、特定の場所と時間にいた人物の位置データを政府が取得するための令状。携帯電話会社やGoogleなどのソフトウェアベンダーが位置情報を保持しているため、警察はこれを活用して犯罪捜査を行うことができる。しかし、この手法は無関係な第三者のプライバシーを侵害するリスクがあるとして、憲法上の問題が指摘されている。

出典: Vox