米上院銀行委員会、暗号資産市場構造法案を公表

米国上院銀行委員会は5月13日、暗号資産市場の構造を定める包括的法案「デジタル資産市場明確化法(Digital Asset Market Clarity Act)」の全文を公表した。全309ページに及ぶ法案は、5月15日のマークアップ審議に向け、前倒しで公開された。

委員長のティム・スコット議員(共和党・サウスカロライナ州)とデジタル資産小委員会委員長のシンシア・ラミス議員(共和党・ワイオミング州)、トム・ティリス議員(共和党・ノースカロライナ州)が法案テキストとセクションごとの要約を発表した。

「この法案は委員会全体で真摯に取り組まれた成果であり、米国民に求められる確実性、安全性、説明責任を提供します。消費者保護を最優先に、不正資金の撲滅、犯罪者や外敵への対抗、そして金融の未来を米国にとどめるものです」
ティム・スコット議員

「この法案は、党派を超えた1年に及ぶ血のにじむような努力の結晶です」
シンシア・ラミス議員

ステーブルコイン利回り規制を巡る激しい議論

法案の中で最も議論を呼んだのが、第404条に盛り込まれたステーブルコインの利回り規制だ。この条項は3段階の交渉を経て現在の形にまとまった。

5月1日に妥協案が公表され、5月4日にはティリス議員とアンジェラ・アルソプロークス議員(民主党・メリーランド州)が共同声明を発表。銀行業界からの圧力が続く中でも「敬意を持って意見の相違を認める」と合意を確認した。

最終的な条文では、ステーブルコイン発行者と関連事業者が、銀行利息と経済的に同等の利回りをステーブルコイン残高に対して支払うことを禁止している。一方で、活動に基づく報酬(支払い時のキャッシュバック、取引インセンティブ、商取引に紐づく報酬)は引き続き認められる。ステーブルコインを保有していても活動がなければリターンは発生しない。

コインベースのCEO、ブライアン・アームストロング氏は5月13日にX(旧Twitter)上でライブイベントを開催し、「全員が望むものは手に入らなかったが、必要なものは得られた」と述べた。同社は少なくとも5つの大手グローバル銀行と提携を進めており、統合を「双方にとってのWin-Win」にしたいと語った。

法案が成立すれば、米証券取引委員会(SEC)、商品先物取引委員会(CFTC)、財務省は12カ月以内に共同で実施規則を策定する義務を負う。

銀行業界の反発と内部分裂

米銀行業界は依然として反対姿勢を示している。米国銀行協会(ABA)、銀行政策研究所(BPI)、独立系コミュニティ銀行協会(ICBA)は母の日の週末に銀行CEO宛ての共同書簡を送付し、議会に働きかけてステーブルコイン条項の阻止を求めた。

主な主張は、利回り付きステーブルコインが保険適用預金の代替となり、住宅ローンや融資のための銀行資金を脅かすというものだ。しかし、業界内部では意見が分かれている。消費者向け事業を展開する大手銀行は反対を表明している一方で、そうした事業を持たない銀行はより受け入れやすい姿勢を見せ、一部のコミュニティ銀行は静かな支持を示しているという。

コインベースの最高政策責任者、ファリヤー・シルザド氏は預金流出の主張について「捏造であり、大幅に過大評価されている」と述べ、完全準備型ステーブルコインは部分準備型の銀行預金とは異なると指摘した。

バーニー・モレノ議員(共和党・オハイオ州)はX上でABAの動きを「銀行カルテルの全面的なパニック」と呼び、木曜のマークアップ審議で賛成票を投じることを明言した。

ガラクシー・デジタルのリサーチによると、ステーブルコインの成長により数兆ドル規模の外国資本が米国の銀行インフラに流入するとの試算も発表された。